想像の小部屋

なんか色々まとめたり書いたり。

悟られている

「お前も意外と、あれだね。」

「あ?」

不機嫌そうに視線を寄越した青年は、少女を見てさらに顔をしかめた。

いつも明るく笑っている彼女の、一見かわりない笑顔に少し影が指しているのに気付いてしまったからだ。

「真先輩と実先輩はまあ、一目見た時から危ないなーって思ってたけどさ。

お前はそんな事ないと思ってたわ、鮫島。」

どこか悲しそうに見られているのを不満に思ったらしい、鮫島と呼ばれた青年はいよいよ少女を睨みつける。

言いかけた暴言を遮るように少女は続けた。

「生き急ぐなよ、あんまりさ。」

ふと、静寂が訪れたように思えた。

「……くだらねぇ。」

タバコの煙と一緒に吐き出された悪態に、帰ってくるはずの強気な返答すら聞こえてこないことは、彼にとって耐え難く、舌打ちをすることで間を保つ。

少女の考えていることがここまでわからないことなど、滅多になかった。いや、彼女がなにかを考えているなどと、ここまで思い知らされることがなかっただけなのだ。

どうしても埋まらない、他人というその溝が大きく口をあけているように感じられた。

「ガタガタ言ってんじゃねえよ、死にたがりが。」

去り際そう吐き捨てた彼の言葉が彼女に深く突き刺さったことすら、青年は知ることができなかった。

 

 

いつものようにこの人間社会になじみ、軽い言葉と笑顔で身を固めている。そんな青年を対極的な様でじっとみつめる、物静かなまた青年が居た。

兄気質の青年は、自分をじっと見つめる彼を見つけるとそれだけで何か用があるのかと察して声をかけるため近づいてきてくれる。

そんな様をも、彼は静かに見つめた。自分に近づいてくる存在に対してそれ以外の対処法を知らないのもあったが、彼は青年を観察していたのだ。

彼は知っていた。明確に言葉にできる内容ではないが、ただなんとなく、青年の裏側を知っていたのだ。

「どうした?真。お腹でも減ったか?」

冗談めかして話しかけ来る青年の笑顔は、人を安心させるには十分すぎるほど、正の感情にあふれているように見える。

「……いつになったら、許すつもりなの。実。」

彼の問いかけの真意を、青年が汲み取ることはなかった。青年は、彼のことを理解していないから。少しの間呆気にとられたあと、また笑顔を取り戻して青年は言った。

「何わけわかんないこといってんだよ。なんか買いに行こうぜ。」

じつにフラットで、学年でも異質な彼を異質とは捉えないような話し方で。

しかし、青年は確実に彼を異質ととらえているのだった。異質だからこそ、青年は彼を意図的に気に入ったのだろう。

「……実。」

「ん?」

「……ごめんね。」

彼の異質さとは、青年の捉えているものとはまた違うのだろうが、青年がそれを知ることができるのかもまた別の話である。

 

 

彼の明るい間抜け面を携えない姿を知っていた人が居たという。彼はきっと知ってほしくなかったのだろう、それ以降警戒に警戒を重ねた。

仮にここでは少女と形容しよう、少女に心を許して、愚痴をこぼせる段階になっても笑顔を崩せなかったのはその経験が作用しているに違いなかった。

猫のように気まぐれなその人はもちろんそれを知っていて、彼を脅かしていたので少女はその人をあまり好くことはできなかった。

物言わぬ彼の新しい住居、冷たい石は弟によっていつも綺麗に保たれている。

「……俺も、昔はお前だけだったよ。」

少女は、彼の底知れない闇に気づいていた。知っていた。見えないふりをし続けた。

「……本当は、明るみにだして支えてやるべきだったのか?」

問いかけてももう答えなど返ってこない。理解している。

「なあ夢兎、お前、幸せだった瞬間って……少しでもあったのか。」

強い風が吹いて線香に灯る静かな火を消した。まるで否定の返事のように感じられて、少女は目を伏せた。生きていた彼になら言ったであろう別れの言葉も、石に告げることはない。そっと立ち去る少女の背中に、語りかける透明の影は、生まれてから死ぬまでのどの瞬間よりもさみしそうだった。

「幸せじゃなかった、ごめん。……俺のせいだよ。でも、お前らのせいだ。」

彼もまた、少女の劣等感に気づきながら、その劣等感を信じてなどいなかった。

後に残るのは、孤独だけである。

 

 

不気味な人だ、と思ったのをよく覚えていると少年は語った。

青年がゆっくりと視線を少年へと向ける。うつむきがちに、独り言のようにしゃべるのは少年が寂しい時に出す癖だった。

「……本人に言うには、ちょっと心無いんじゃない?」

冗談めかして微笑んでみても、少年は顔をあげない。

「不気味な人だと思ってた。ずっと。あの人が家に君を連れてきたときも、一人で歩いているときも。君を見かけるときはずっとそう感じてた。」

「まあ、そうなのかもね。時々言われるよ。」

「だけど、違うんだね。」

いや、違うと言ったら語弊があるのかも、などと年齢に見合わない言葉づかいで発言を訂正する。

いつものように、そのうち泣き出してしまうのだろうと思っていた青年からすると驚いたことに、少年は顔をあげて、いつもよりも優しげな顔で青年に話しかける。

「……あの人が居なくなったの、さみしかったんだね。」

彼と同じ、紫の目が青年を見つめていた。

笑顔ひとつとってもまるで似ていない、それでもとりあえずといわんばかりに揃えられた髪の色と瞳の色。

本当に、彼らは兄弟なのか。青年がそう疑うのは二度目や三度目のことではなかった。

 「君には、劣るよ。」

何において劣るのか、とは明確に示すことはお互いにできなかった。

 

 

彼らはお互いに何も知ることはない。

何も知らずとも、彼は青年を許さず、青年は彼女を餌に据え、彼女は彼を認めることはない。

だからこそ、彼らは。

 

神殺し

「他人の目なんて気にならないんでしょう。そうじゃなきゃあんなに自分勝手に言いませんよ。」

「前から思ってたけど、彼そんなに自分勝手なのお?他人には無関心に見えるけどねえ。」

「ええ!あれのどこを見てそんなことを。他人の行動には口出ししますし、その価値基準は自分独特のもの!世間一般とか、相手の価値観んて配慮しないあの口振り!信じられませんね。」

「ふうん?それにしても彼ひとりぼっちだよねえ。寂しくないのかなあ」

「彼にそんな感情存在してるんですかね…自分ひとり居れば満足なのでは?」

「それもそうだねえ」

 

「違うんじゃないか?」

「「え?」」

 

「そんなふうに見えるように、俺達が仕上げてしまったんじゃないか?」

 

「俺達は"自分"を持っていないから、人形みたいに世間に流されて踊るしかない。

それをあいつは"可哀想"だと思ってるんだろうな。

あいつは紛れもなく、人間離れした神だ。だから人間を救おうとする。」

「…神。」

「救う?」

「事実、あいつが立ち止まって、座り込んで泣き出してしまったらどうなる?俺達は導けるか?無理だろ。

だけど逆の立場ならあいつはそれができるんだ。

だから俺達がいつ倒れてもいいように、座り込んだことを隠さなくていいように前を向いてる。」

「……考えすぎでしょう?」

「いや。」

「そんなにあの子が他人の為を思ってるとは思えないけどねえ。」

「いいや。」

「どうしてそんなに肩を持つんです?」

「…。」

 

「俺がなあ、あいつのこと、嫌いになっちゃったからだよ。」

未だ知らず

「そういえば俺夢兎のこと、あんま知らねえなあ」

生前よく友人にはそう言われたものだ。いや、別に隠したりしてたわけじゃない。というか、隠すほどの出来事はこの身の上に起こっていない。

よく思い出さずとも、意外と不幸なことなど起きていなかった人生だ。死んでしまった直後こそ、友人の間で話題になったが、深い中の友人など居なかったらしく、また日常に溶けていってしまった。……彼女は、悲しんでくれていたと願っているが。

 

話を戻そうか、そう、俺って無自覚だけど 秘密主義らしい。

他人の秘密にも足を突っ込まず、自分のどす黒い腹の中にも入らせず。のらりくらりとアホヅラ1丁で生きてきた。らしい。

まあ自分の持ってたマイナスな感情を、他人にひけらかさなかったというのは間違いじゃない。聞かれるのも好きではなかったし、悟られるのすら嫌だった。だからと言って完璧に隠せていたかは別の話だ。

もしかしたら、特別好きだったあの子を除いて、他人の秘密を共有したりするのも面倒だったのかもしれない。

だからかな。

俺は君のことをまだ何も知らない。

 

知ってしまっていいのだろうか、消えゆく俺が共有してもいいのだろうか。

君の揺れるその赤い瞳が、なにを思い、細められるのか、伏せられるのか、…知ってもいいだろうか。

そうならば、いや、それとも君も、秘密主義なのかなあ。

俺、君になら、……ああ、いやなんでもないんだ。

 

もしも。

「もしも体すらなくなった俺でいいなら、君のこと。」

 

ステルス性涙

清潔な病室の中で、蝉の声を窓越しに聞きながら、青い空を彼は眺めていた。

ベッドの上で読んだ本は、片脇の机にこれでもかと積み上げられ、彼の暇だった時間を顕著に表している。

がらり、とドアが開いた。

「美春。」

呼ばれた彼は微笑をたたえて扉の前に立つ同輩を振り返った。

差し入れにと、お金も無いのに買ってきたらしいアイスの袋を、爽やかな笑顔で掲げる同輩を眩しく思ったのは、窓から入ってくる光の反射は関係ないのだろう。

軽い言葉を交わして、また雑談が始まる。

 

同輩の新しい仲間や、弟の話を聞くのが彼は好きだった。その代わり、戦場の話を少し嫌った。

「今は少し敏感になってるだけだよ。退院する頃にはまた平然とした顔で戦に出るさ。」

自分でそう言った彼は、本当にいつも通りだった。

「…そんな顔しないでよ。ほんとに俺は平気だよ?」

同輩の心配したような顔を見て彼は笑った。しかし、珍しくその笑顔には影が残りっぱなしになっている。

「本当にか?」

そう問い詰められると、いつものように大丈夫だ、と偽ることも、茶化すこともなく、ゆっくり彼は俯いた。

「……平気なんだ。本当に。…平気なんだよ。俺は、友人を、目の前で亡くしたはずなのにね。」

同輩はこの時、少なからず驚いたのだと後に言った。もちろん、彼に言ったわけではなかったが。

「自分も怪我をして忙しかったのだとか、そんな言い訳は通用しないよね。暇な時間もたくさん……あった。

でも俺、泣けなかったよ。」

彼が涙を零すことは事実なかった。悲しんでいないというわけでないことは、表情を見ていれば明白である。

弱音どころか、本心らしい本心や悔やみを、彼の口から聞くなんて初めてだった同輩は、つい言葉に詰まってしまった。

「…でも、」

ようやく何かを言おうとした時、彼はいいんだ、と遮ってしまった。

彼はいつもそうなのだと、同輩は奥歯をかみしめる。申し訳なさそうな顔をしていても、彼は自分の不幸は自分だけでさらりと解決する力を持っていると、知っているから滅多に頼らないのだ。

「正直、泣けなかったことには自分でも驚いているんだけどね。」

その言葉を最後に、彼は亡くなった友人の話をやめた。同輩もそれに一切触れなくなった。

 

エアコンの効いた室内は無機質な涼しさに包まれ、ああ、あの生臭い、なまぬるい、ひどく劣悪な環境にある戦場に帰りたいと2人に思わせるには十分であった。

願わくば、また共にと、無くなった彼の左腕に視線は集まっていた。

東塔里

突然だが、母は父と違い占いが好きだった。

特に好きな占いはタロット占い。まあ、好きだと言っても盲信するわけじゃない。ゲーム感覚で、時々ふっと占ってもらうだけだ。それに行動が左右されることなどない。

ところで、俺の…いや、私とさせてもらおう。私の名前は塔里という。

タロットカードで不吉とされる塔と、若者に見捨てられ、寂れてしまったような里という字からできている。

 

私が女性であったのは、明確には覚えていないが、本当に幼い頃までの話だ。

女性でなくなってからも、お前は男ではないのだからと叱られた事は多々あった。ならば、私の性別はなんなのだろう?俺とは、一体誰なのだろう?と、思春期を終えるまで必死に悩んだものだ。

そんな思春期時代を、本人が意図してかせずか、支えてくれたのは藤色の瞳のゆきうさぎだった。

彼もまた、思春期と呼ばれる年頃だったはずなのに、どうしてああも確立された思想を持っていたのかは、後に考えても謎ではなかった。

かくして太陽となった私…ここでは俺の方がいいか。俺は高校で、より深い沼のような目をした別個体のうさぎに会うこととなる。

結論から言うと、そのうさぎは死んだ。俺の手どころか、目すら届かない場所で、霧に包まれて死んだのだ。

春に浮かれた猫が、どういったつもりか俺にうさぎの骨を拾ってきた。春一番の風とは、名前と裏腹に冷たくて強いものだ、と思い知った。

風に吹かれて運ばれた雲が太陽を覆い、麗らかな春は終わりを告げる。

雨が降らないせいで、人間は雲に気づかなかった。相変わらずの晴天ね、気持ちがいいわと誰もが笑っていた。

ずいぶん強かった風は、いつの間にか湿度を増して、俺の頬をじっとりと撫でていくのだった。春の頃とは風向きは変わり、このままきっと、乾燥した心地よい季節風となるだろう。ついでにあの霧を晴らしてくれないだろうか、秋くらいになれば、恐らく丁度良い風になる。

雪解けをとっくに終えた春が取り残されて見えるようだ。俺が進んでいるから、当然なのかもしれない。

 

その頃から、チカチカと視界に光が映っていた。

 

そうしてなんと、俺は私を思い出す時がやってくる。蜂蜜色を薫らせ、艶やかな黒い絹を靡かせ、私に笑うのだ。

蜂蜜を満たしたければ、暖かな日差しを花に注ぐしかないだろう?

彼女が呼ぶ時だけ、私の名はもっと違う意味を持つのだ。

色んな人の目印になり、遠くの島まで光を届ける塔と、そよ風に吹かれては家族が平穏を笑う懐かしい里。

私の名は、東塔里という。

 

アルバム

「・・・。」

相手にばれないようにそっと物陰から落ち込んでいる弟を観察した。

先ほど親父様に叱られていたのはよく知っている。

「・・・うー・・・ん?」

弟とは話す機会があまり多くない。俺の教育が多忙なせい、ともいう。

でも、こうもぐすぐす泣いているところを見て、放っておけるほどの仲でもない。

静かに声を殺してぐすぐす泣く弟の姿があまりにもその幼さに相応しくなくて。

「なんか、なーんか楽しいもの・・・」

自分が行っても、うまく慰められる気がしない。

何か、何かないか。そう思って目を止めたのがひとつのクマのぬいぐるみだった。

海賊帽と埃をかぶった、大きめのぬいぐるみ。

「・・・ちょっとだけ!ちょっとだけお前の心、貸してな!」

小声でそう言って、ぬいぐるみをそっと抱いて額を合わせる。

ふわふわとぬいぐるみに魔法がかかっていくのがわかる。

『!』

ぴょこっと動き出したクマはしばらくバランスが取れず、ぼてっ!と音を立てて転んだりしていたが、やがて安定して俺の足元に座った。

「あのな!あいつ、元気づけてーんだよ。だからさ・・・。」

作戦会議。いたずらを仕掛けていたころのワクワクした感じを思い出す。

「頼んだぜ!」

にっこり笑ってぬいぐるみとハイタッチ。

あとはそっと見守るだけ。がんばれよ!

・・・そういえば、あのぬいぐるみ名前なんだっけ?なんか、昔見たアニメーション映画の海賊だった気がするけど。忘れちまったな。まあ、いっか。

 

 

 

 

「・・・っ、うえ、ぐす、・・・っ」

溢れて止まらない涙が頬を伝ってカーペットに落ち、小さなしみを作っている。

「・・・う”-・・・」

どうしようもない気持ちが蟠って、どんどん涙に代わっていく。

すると、突然柔らかい何かに背中をぽんぽん、とたたかれた。

「?」

涙を手の甲でぬぐい、腫れて真っ赤な目でそちらを見やる。

すると目に入ったのはぬいぐるみの薄汚れた手。訳が分からず視線を移せばくまのぬいぐるみがこちらを見つめていた。

あまりに驚いて言葉を発せず、ただ口をぱくぱくと動かす僕に構いもせず、ぬいぐるみは急に手と手を合わせてなにやらもじついている。

少し落ち着いて首をかしげながらその様子を見ていると、くまは急に両手をぱっと開けた。

そして視界に入る、黄色くて可憐な花。

「…!?すごい…!どこから出したの!?」

先程までの暗い感情はどこへやら、僕の心は突如咲いた花のように明るくなっていた。

くまは誇らしげに花を掲げたのち、僕にそれを差し出した。

くれるの?そう問えば頷いてさらにずい、と差し出してくる。

それが本当に嬉しくて、感動して、惨めだった気持ちがまるでネバーランドに招待された少年のように夢に満ちたものになっていた。

「ねえ!」

くまさんはどこからきたの?そう問う前にくまは部屋から出ていこうとしてしまう。

待って!そう言った時にはもう扉の向こうにくまの姿は消えていた。

その場に取り残された僕はもう1度花を見つめ、そしてその奇跡を味わっていた。

人の心を明るくするその行動は、手品というのだと後に知った。

 

「作戦大成功だな。」

そうくまのぬいぐるみとハイタッチをした少年の存在を、僕は大人になって手遅れになるまで、知ることは無い。

 

正反対な初恋

ずっと私の初恋は兄様に奪われたと思っていた。兄様は雄大で、強く、美しく、そして心から優しいお人だ。話しかけていただけると心は踊るし、触れていただけると日が沈むまで機嫌を良くした。

慈雨の神。まさにと言わんばかりに兄様はよく弱いものに気付き、お助けなさる。殺戮と破壊を繰り返す私とは正反対だ。そんなところにも強く惹かれた。

 

対してあの、真っ黒な太陽だ。

容赦のない日差しには慈しみどころか他者を気にしている素振りすらない。

話しかけられるとイライラするし、触れられなんかしたら吐き気がしてしまう。

殺したいと思えるほどには嫌いだ。どう殺してやろうかと頭をいっぱいにすることすらある。

次会った時こそ、何かしら攻撃を入れてやる。

あんな方法ならどうだろうか?こんな方法なら?そうやって時間を無駄にしたのも、すべてあいつのせいだ。

でもその時間を、兄様はこう言うのだ。

「まるで、好きな人を想う乙女の時間だ」

と。

指摘されてしまえば気付いてしまう。

その無駄な時間の結論は決まってこうだ。

「ああ、早く会いたい」

見て見ぬ振りをしてきたのかもしれない。

だってそうだろう

こんなものが恋だなんて誰が素直に認めよう?

 

ああ、すべてあの真っ黒な太陽のせいなのだ。