無人の館にご注意を #7
白い、赤い。
Side.風兎
チャリン、と金属音が耳に入った。音の先を目でたどれば扉の前に鍵が落ちていた。
「1階図書室」と書かれたタブつきの鍵を見て、扉を見る。
ここは1階。この扉の先は・・・・
鍵穴に金属を差し込む。滞りなく回った手元に違和感を感じながら僕は部屋の中に入った。
「あ」
「風兎ー!待てよー!」
扉を閉めた直後塔里さんが部屋に入ってきた。この追いつく速度的に少しだけ石水の話に耳を傾けてたんだろう。気に食わない。
ぶうぶう文句を言ってくる塔里さんを無視しながら部屋を見回せば図書室の名の通り本棚がたくさんあった。
それと机。その上に・・・あれは、鍵?
「ちょっと塔里さんここで待っててね。」
そう言って机に向かう。塔里さんはついてきかけてるけど睨みつけてとどまらせる。
だって、僕は兄に怒られたくない。
ねえ、居るんだろ。あんな手すりの壊し方する奴は他に居ないよ。
ねえ、夢兄?
「塔里さん!!!」
掴んだ鍵を投げる。僕がいなくても幸い、どうにかなるだろう。夢兄は僕よりも塔里さんに微笑むはずだ。
鬼が視界の隅で足を踏み出す。
この図書室の本棚越しに、部屋に入った一番最初に見えていたのだ。塔里さんが入ってきた頃にはうまく姿を隠していたが。
僕は彼女を死なせる訳に行かない。兄の大切な人を僕が守らない理由は見つからない。
「風兎!!!おい、早くこっち来いよ!!!」
なんだ、まだそんな所にいたのか。
そう思って塔里さんの方を見やればドアが勝手に開いていた。
ああ、そこに居たんだね?じゃあ早く塔里さんをつれてって?
「風―・・・ッ」
バタンッ!!
荒々しくドアの閉まる音。
残されたのは僕と鬼。
最高だ。最悪だけどな。
「お前さ、確かダメージ負いすぎたら消えるんだよね?」
で足掻こうじゃないか。
僕は諦めが良いわけじゃ無いんだ。
走り回って、足が動かなくなった後。
触れてもいない本棚が鬼側に倒れたのは。
あの人は最後に、僕にも微笑んでくれたんだろうか?
ならごめんね。
僕もう立てないんだよそれくらい足掻いたんだ。
何か、冷たいものが頬に落ちてきた気がした。
直後伸びてきた大きな手が、迫ってきた口が僕の存在をかき消すように。
呑み込んだ。
Side.夢兎
泣かないで、りーちゃん。
何も悪くないよ。悪いのは風兎さ。風兎と、俺だからさ。
そんなに嘆かなくていいよ。
風兎最後に笑ってたぜ?だから平気。
俺としてはさ、もっと恐怖を感じながら死んで欲しかったんだけどさ。
なんか不満なくらいだ。
もっと怖い想いしてほしいなんて未練が、今度は俺の中に残るみたい。
でもね、りーちゃんには怖い思いしてほしくないかな。
だから早く立ち上がろ。一人じゃ怖いよね。
さっき女の子もいたね。仕方ないから合流しに行こう。
さあ。りーちゃん。
「行こう。」