想像の小部屋

なんか色々まとめたり書いたり。

意外と繊細

その違和感を感じたのは1回目じゃない。

反射的に、とは皮肉なものでそこにある意図だとか、その人が向けていた感情だとか、そういったものは関係ないらしい。小難しく話されてしまったので、正しく理解しているかは若干不安だが、確か実先輩がそんなことを言っていた気がする。

「よう鮫島ぁ!今日は珍しく1時間目から居るじゃーん、いえーい!ww」

そこに悪意なんて微塵もなくて、ただよりフレンドリーにと思っただけだ。

明るく話しかけた方が、ちょっとくらいアクションを起こした方がいいと思っただけ。

 

「ッ、朝っぱらからうるせえよまな板女。」

 

見向きもせず払いのけられると思ったハイタッチに、彼が一瞬こちらを警戒したような。一瞬この手にその視線が釘づけにされていたような。

本当に一瞬だったけど、確信した。というか、前例より隠すのが下手くそだ。

 

鮫島菊哉には、過去習慣的に暴力を振るわれていたことがある。

 

 

「真先輩ってまだハイタッチとか怖いんすか?」

「…?どうして?」

「いやー…。まあ。」

前例というのが、私の所属する隊の隊長である先輩……霧野真だった。

ずっと前に、あれは……確か先生に真先輩と訓練していたのを褒められた時だっただろうか。喜んで私は真先輩にハイタッチしに行ったのだが、彼はそれにほんの僅かな怯えを見せ、なんと私のハイタッチから一歩身を引いた。

ハイタッチに慣れていないのかなとか、この人マジでコミュ障だ…とは思ったがその怯えは危うく見逃すところだった。

後から実先輩に、なんか真先輩にハイタッチ避けられるんすよねー悲しいわーしかもあの人ちょっと怯えてた気がするんすよねーコミュ障キめすぎでしょーなんて話したところ、これからは注意するように、と説明をうけたのだった。

そんなこと軽々しく私に教えて良いのか、という疑問に関しては実先輩に私は信用されているとの返答だった。正直怪しい。

 

鮫島がとった反応は真先輩と違って警戒、怒りだった。…正直殺意を向けられたといっても過言ではなかったとあの時の目つきを思い出せば言えるだろう。

 いったいどういう壮絶な過去をたどってきたのだろう、私の周囲の人は。確か実先輩も弟妹の面倒を見ているという話だ。

軍学校ならそんなものだろうか…正直私には理解も想像もできない。

真先輩は親だった。鮫島も…親?

だとしたら、誰に愛されてきたのだろう。月先輩や和希ちゃんだろうか。

身内には?

 

「鮫島ー!!やっほー!」

「んだよ、うるせえ女だな。」

「なんだよwwwww」

 

低い位置で手を振ってあげるこれも一応愛なんだけれど、

彼に伝わっているだろうか。

 

伝わらないかもな、お馬鹿さん