神殺し
「他人の目なんて気にならないんでしょう。そうじゃなきゃあんなに自分勝手に言いませんよ。」
「前から思ってたけど、彼そんなに自分勝手なのお?他人には無関心に見えるけどねえ。」
「ええ!あれのどこを見てそんなことを。他人の行動には口出ししますし、その価値基準は自分独特のもの!世間一般とか、相手の価値観んて配慮しないあの口振り!信じられませんね。」
「ふうん?それにしても彼ひとりぼっちだよねえ。寂しくないのかなあ」
「彼にそんな感情存在してるんですかね…自分ひとり居れば満足なのでは?」
「それもそうだねえ」
「違うんじゃないか?」
「「え?」」
「そんなふうに見えるように、俺達が仕上げてしまったんじゃないか?」
「俺達は"自分"を持っていないから、人形みたいに世間に流されて踊るしかない。
それをあいつは"可哀想"だと思ってるんだろうな。
あいつは紛れもなく、人間離れした神だ。だから人間を救おうとする。」
「…神。」
「救う?」
「事実、あいつが立ち止まって、座り込んで泣き出してしまったらどうなる?俺達は導けるか?無理だろ。
だけど逆の立場ならあいつはそれができるんだ。
だから俺達がいつ倒れてもいいように、座り込んだことを隠さなくていいように前を向いてる。」
「……考えすぎでしょう?」
「いや。」
「そんなにあの子が他人の為を思ってるとは思えないけどねえ。」
「いいや。」
「どうしてそんなに肩を持つんです?」
「…。」
「俺がなあ、あいつのこと、嫌いになっちゃったからだよ。」