正反対な初恋
ずっと私の初恋は兄様に奪われたと思っていた。兄様は雄大で、強く、美しく、そして心から優しいお人だ。話しかけていただけると心は踊るし、触れていただけると日が沈むまで機嫌を良くした。
慈雨の神。まさにと言わんばかりに兄様はよく弱いものに気付き、お助けなさる。殺戮と破壊を繰り返す私とは正反対だ。そんなところにも強く惹かれた。
対してあの、真っ黒な太陽だ。
容赦のない日差しには慈しみどころか他者を気にしている素振りすらない。
話しかけられるとイライラするし、触れられなんかしたら吐き気がしてしまう。
殺したいと思えるほどには嫌いだ。どう殺してやろうかと頭をいっぱいにすることすらある。
次会った時こそ、何かしら攻撃を入れてやる。
あんな方法ならどうだろうか?こんな方法なら?そうやって時間を無駄にしたのも、すべてあいつのせいだ。
でもその時間を、兄様はこう言うのだ。
「まるで、好きな人を想う乙女の時間だ」
と。
指摘されてしまえば気付いてしまう。
その無駄な時間の結論は決まってこうだ。
「ああ、早く会いたい」
見て見ぬ振りをしてきたのかもしれない。
だってそうだろう
こんなものが恋だなんて誰が素直に認めよう?
ああ、すべてあの真っ黒な太陽のせいなのだ。