想像の小部屋

なんか色々まとめたり書いたり。

恋する乙女じゃいられない!

ヴィオラさんってさあ、フォーカ君と付き合ってるんでしょ?いいよねえ私もあんなカッコ良くて優しい彼氏欲しいー!」
「えっ?そうかなあ、〇〇ちゃんならもっといい人捕まえれるんじゃないの?w」
「またまたぁ!あんなかっこいい人見つかんないって!」
「あはは…」
こんな会話をするのももう何十回目。
数え切れない女の子が何回でもフォーカを褒めにくる。やっぱあいつモテるんだなあって毎回嫌でも確認させられる。

普通の女の子があいつにかける言葉と、私があいつにかける言葉は180°、まるで違う。
多分私は今まで一回もあいつにかっこいい、とか優しい、とか言ったことがない。…多分。
もちろん思ったことが無いわけではない。
ただ思う度どこか冷静な自分が「恋する乙女でもあるまいし」とストップをかける。
結局口から出る言葉には刺ばかり付いていて、可愛らしい花なんてどこにも咲いてはいない。
「…嫌いじゃあ、ないんだけどなあ。」
ほらまただ。本人がいないところでさえ、「好きだよ」の一言すら言えない。
何がこんなに自分を引き止めるんだろう?
もう腐女子の性なのか。まともに恋愛もできないという自分の中の諦めがあるからなのか。
「…お菓子作ろっかなあ。」
甘い香りの花の代わりに、甘い甘いチョコレートケーキを。
いつまでこれで、あいつは開花を待ってくれるんだろう。
あいつの髪みたいに綺麗で、可愛い花びらはもう私には咲かせられないかもしれないのに。
「あっヴィオラ!」
「うわっ」
「うわってなにさ!」
生地を混ぜているとお揃いのピアスをキラリと揺らしながらあいつが部屋に入ってきた。
馬鹿みたいに綺麗な瞳を嬉しそうに細めて私を見つめる。
ああ、かっこいいなあ。
こいつと話すと、いやこいつを見ているだけですぐに頭がいっぱいになる。

ばかみたい。私こいつのことめっちゃ好きなくせにさ。

「…ケーキ、どんくらい食べる?」
「えっくれるの!?」
「あげるよ。いらない?」
「いるいる!」
なかなか言えたもんじゃない。かっこいいも好きだよも。
しょうがないでしょ。恋する乙女なんだもの。