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想像の小部屋

なんか色々まとめたり書いたり。

王子様の休息

「…先輩。」

「ん?おや、珍しいね。君がさぼりだなんて。」
随分と落ち込んでふらふらと足元もおぼつかない様子の彼が声をかけてきた。
おそらく原因は、先程の騒ぎ。
この屋上からだと良く見える。
まだまだ詰めが甘い、と言ったところか。きっと私がそれを知っていることを彼は知らない。
「…先輩。僕、僕は、悪くない。」
「本当にそうかな。話してごらん。」
彼を隣に導き、頬をなで、頭を撫でてやる。
安心させてやれば、甘えたがりな彼は私の膝に頭を乗せ瞼を伏せる。
「…あいつが、僕を否定したから、だから、正そうと思って、そうしたら、奴がきて、あいつのこと、心配して、僕を睨むから、僕を悪く言うから、」
舌足らずな子供の様に、ぽつぽつと。
静かに静かに頷いていれば彼はそっと全てを吐き出してくれる。
なぜ私にこうも心を開くのか、不思議なものだ。
「…そうしたら、…っ、あの子が、哀れむような、目で、僕を…ッ、見る、から…ッ。」
ぼろぼろと大粒の涙を零し始めた彼の頭を変わらず撫でながら私は言う。
「そうか。どうやら君は本当に悪くなかったようだね。彼にそうやって見られて、悲しかったかい?」
うんうんと頷く彼はその歳よりも幾分幼く見えた。
「きっと彼も、悪気はないんだろう。君ならわかるね。また優しく撫でてくれるさ。」
泣き疲れてうとうとし始めた彼を、眠りへ誘う。
「ほんとに?」
「はっはっは、私が嘘をついたことなんてあったかな?」
「・・・いっぱい」
「・・・そうかな?」
「うん」
ふふ、と幼く笑う彼はようやく眠りについた。
日差しは少し柔らかくなり、彼の眠りを装飾するようで。
「・・・本当に、選ばれた子だねえ。君は。」
天才。そう称される彼。
我儘で自己中心的、腹黒くてずる賢い。そして純粋で一途で、いつだって気品を保ち、端整な顔立ちをいつでも笑みで満たしている。
「ジェラルド君。」
君の欲しがる彼が、どうか。
 
どうか彼のまま、居てくれますように。