既視感
「せんせ、せん、せ」
赤い、血。赤い、肉。赤い、赤い、赤い、憧れの人。
冷たい、愛しい人、大好きな人。冷たい、自分の頬。
赤い、大きな、熱い、炎。
そしてかき消される、か細い声。
弱い弱い、僕の声。
「せんせ、い、せんせ・・・っ」
滲む視界、真っ赤な視界。
嗅覚をあまりにも刺激しすぎる、ひどい戦場の匂い。
「・・・先生、」
そして冷たい、心臓と脳。
「・・・先生、先生のこれ、もらうね。」
「先生、すぐに会いに行くから。」
「でも、先生の仇とってからだね、先生も許してくれるでしょ?」
「先生、いってきます。」
「先生、大好きだよ。」
冷たい石碑に口づけを落として、彼はサイズの合わない下駄を引きずりながらその場所を後にする。
これから向かうのは明るい、そして優しい場所なのだと後で知った。
そして彼はやがて既視感とともに、フラッシュバックによってまた囚われる。
まるで壊れたロボットがガチャガチャと音を立てて動くかのように。