主演:高田君(モブ)
その光景はまさに猟奇的だった、と後の彼は語った。
ダルマになっても殺してもらえず、苦しみと恐怖で人間ではなくなった敵達が彼にそう言わせた原因である。
そしてその光景を作ったのは他でもない、優等生の竜胆実君だった。
「おはよう」
いつも通りの朝、高田が教室のドアを開けるとざわついていた教室が一瞬静まり返った。数名の女子は高田を見てコソコソと内緒話を始める。
なんともぎこちない空気を感じた高田は仲の良かった友達に問いかける。
「何かあったのか?」
すると仲間は皆目配せをしながら控えめにこう忠告した。
「お前、やばいかもよ。」
と。
わけがわからなかったが、優等生の竜胆実君はその日あまり元気がなかった。
仲間内の忠告を理解したのは1週間後。
文房具や上靴などの盗難が相次いで起こっていた1週間の最後の金曜日に、クラスを牛耳っているような女子の集団から声をかけられたのだ。
「ねえあんたでしょ?竜胆君のこといじめたってやつ?」
「嫉妬とかダサいよ。最低。」
「竜胆君学校に来なくなったらどうすんの、困るじゃん。」
どうやら高田は、優等生の竜胆実君をひどくいじめた悪者になっているらしかった。
こういった空気では、どれだけ抗おうとも事実を覆すことなどできるわけがなかった。やがて彼はクラスで孤立した存在になった。
優等生の竜胆実君は少しずつ元気を取り戻しているようだったが、どこか切なそうだった。
そして高田に対する風当たりはどんどん強くなっていった。
「なんであんた学校来てんの?」
「竜胆君かわいそうじゃん、あんたの心配までしてんだよ謝りなよ。」
「あんたが居るから竜胆君つらそうじゃん。」
「最低」
「クズ」
「なんで生きてんの?」
「早く戦場でも行って死ねばいいのに。」
「竜胆君かわいそう。」
「竜胆君が」
「死ね」
「竜胆君」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
もう聞こえる言葉なんてほとんど無くなっていた。
の竜胆君はもう元気そうだったが、高田を心配しているようだった。
高田は完全にクラスの中で死体になった。
昼飯時、ずいぶんと痩せ細った高田は誰もいない中庭で蟻をつぶしながら空を見つめていた。
そんな彼に足音が近づく。
「・・・高田。隣、いいか?」
高田は返事をしない。
「・・・悪かったな、俺のせいだよな?」
声の主は切なげに笑う。
「・・・高田。」
高田の肩に手を置いて、励ますように声をかける。
高田がようやく視線を動かして彼を目に捉える。
そして高田は目を見開いた。
「俺でよければ、相談のってやるぜ?」
優等生の竜胆実君は、それはそれは楽しそうに。
優等生とは思えない歪んだ笑顔で彼を殺しました。
「聞いた!?高田病院送りになったって!」
「え?怪我でもしたっけ?」
「違う違う!!心の方!」
「マジでえ!?」
「でも自業自得じゃない?」
「竜胆君に心配してもらっといて結局とかひどーい」
「竜胆君って優しいよねー」
「ほんと、理想の優等生って感じ!」