「どうして、ごめんなさい。ありがとう。」
拝啓
暦の上に春は立ちながら、厳しい寒さが続いております。
いかがお過ごしですか。
まだ僕の存在が貴方の記憶の中にあること、とても嬉しく思います。
ただそのおかげでいらぬ心配をかけていたこと申し訳なく思っています。
僕が今、この学校に通っていることは貴方が気に病むことではありません。
むしろ僕はこの学校で学生兵として祖国に貢献できることを誇りに思っています。
今の生活は貴方が心配なさるほど酷いものではないことを伝えておきます。
また、過去の生活においても貴方が気遣っていたような感情は抱いておりません。
父親を恨んだことも、母親に失望したことも、貴方に怒りを覚えたこともありません。僕はあの頃の家内も嫌いではありませんでした。
今の生活と昔の生活を比べることなど一度もしておりません。
まして、貴方を蔑んだりなどしたことがありません。
白軍での活躍は時折耳にしております。
そのような話を聞く度、顔も覚えて居ない貴方に尊敬の意を抱いております。
母の世話を貴方に押し付けるのは心苦しいですが、それほど立派な貴方ならば母を笑顔にしてくれていると信じております。
ですので、父の事はどうかお忘れください。
幸多き春の門出となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
敬具
××年×月×日
霧野真