空間設計【タナプラ】
ずいぶんと、この宮殿は広くなった。
自分の宮殿のちょうど中心に当たる位置に寝転んでそう思った。
別に改修工事をしたとかそういうわけじゃない。
きっと、元から一人で過ごすには暇すぎるほど広かったのだ。
それが当たり前だったから気づかなかっただけだ。
天井を見ていた目を閉じて、手に持っていたくるみを投げ出す。
いつものように彼を探しに行っても問題なかったのだが、それではいつも通りすぎて飽きてしまう。
途中でめんどくさくなってその辺で寝るのがオチだろう。
たまには自分で待ってみても良い。そう思って音一つしない空間で眠りにつこうとした。
冷たくて、硬い床しかないようなそんな場所で寝るのは。
こんなにも難しい事だっただろうか。
自分もずいぶん甘ったれたものだと呆れる。
再び目を開けて仰向けの状態から左に体の向きを変えればリトアニアの雲海が目に入った。
この雲の厚さじゃあ下はきっと雨だろう。
なんてどうでも良いようなことを考えながら、頭の片隅に彼の顔を思い浮かべる。
「・・・なんで、来ねーんだよ。ばーか。」
届きもしない悪態をついて暇をつぶす。
そういえば、待つとは考えてみたものの彼が会いにくる保障なんて無かったなと。
理解するたび少しずつ苦しくなる。
「今更、」
なんだって言うんだよ。
勢い良く起き上って、ぽつんと置かれた椅子に腰かける。
身を包む何かが今は欲しかった。
しばらく、彼のことや下界。そして使い魔のことなんかを考えていたが気づかぬうちに重くなった瞼に抗わず寝てしまったのだった。
「そういえば、最初はやたらとあいつに姫抱きされてたな」
「俺の名前略して呼んだのもあいつが最初だったっけ」
「意外と・・・意外と?まあ絶対王政な奴だよな」
「どこに、そんなに惹かれたんだっけ。」
「・・・興味?ああ、そういえば面白いもの以外は嫌いだったっけ。」
ふ、と目が覚めた。
夢の中でずとしゃべっていた自分の声・・・いや、
「あれ?起きたのプラア」
目の前でにこついてるこいつの声で起きたのか。
「・・・タナトス、はぐ・・。」
寝起きでぼんやりした頭で両手を彼に伸ばす。
なんとなく、なんとなく。無性に誰かに抱きしめてほしかった。
・・・いや、誰かっていうのは多少語弊があるか?
「何?今日はなんか甘えたさんだね」
くすくす笑って抱きしめてくれた彼の胸に顔をうずめる。
やっぱり、こいつが一番良いかもしれない。
黙って顔を押し付けていれば珍しいね、だの寂しかったの?だのと笑いながら言ってくるが全部無視して抱き着いておく。
最終的には、ふうんと言って一回黙った。
静かな空間が広がる。
「・・・タナトス。」
「何?」
「俺、やっぱお前が好きだ。」
「!・・・突然どうしたの?」
「・・・別に。」
少しだけ、寂しかったからだなんて。
言わなくてもどうせわかってんだろ、ばーか。