無人の館にご注意を #12
新たなる紅い
Side.塔里
「・・・お前、なんであんなに平気で仲間を殺したんだ?」
聞くべきではない質問だと思った。だが聞かずにはいられなかった。
自分の見知った、それも同軍の同級生を。ああも簡単に鬼の足止めに使うような奴の近くに居るのは安全なのか?
「友達だから、その人が好きだから。そんな理由で怪我人を連れていくほど馬鹿じゃない。僕は、あなた方にとって不利な判断はしていないはずだ」
無表情で、本当に無表情で言う。その無表情に確かに俺は恐怖を覚えた。
これだから、何の感情も読み取れない瞳は嫌いなのだと罵倒して自分を落ち着かせる。
ふ、と秋月のほうを見てみれば少し茫然とした様子で立ち尽くしていた。
そういえばあの時、まだ1年の秋月に発言を強要してしまったな、謝らないと。
「秋月?」
「へっ!?あ、き、聞いてるっすよwwwwwちゃんとwwwwww」
聞いてる聞いてないじゃねえよ、と突っ込みたくなったがまあこの状況じゃ仕方ないだろうと思って目を瞑る。それよりも、と先程の事を謝れば秋月は笑いながら「気にしてない」と返してくれた。
「・・・そんなに無理して、笑わなくてもいいんだぞ?」
俺がそう言えば、秋月は「え」と言った後苦笑して言った。
「無理なんかしてねっすよーwwこれが無いと私じゃないんすよwwwwww」
「・・・そうか?」
俺にはどうも無理してるように見えるんだがな、と続くはずだった言葉は途中で終わった。
何故か、というと石水が突然変な声をあげたからだ。
「?石水さん、どうかした・・?」
「い、いえ・・・あの、み、見間違いだと願って・・・」
そう言って石水が今まで向いてた方向から180℃方向転換して別の方角を向いた瞬間、角から赤軍の男が現れた。
「おい、お前たちドアノブを持っていないか?」
だしぬけに、訳の分からないことを言いながら。
Side.杏
最悪だ、何故ここに居る。正直もってここに居てほしくなかった。
後ろから聞こえる同級生の声を確認してそう思う。あの僕様超自分様主義はこの状況に置いてすごく・・・
「おい、石水。お前僕の声が聞こえるだろう?」
邪魔だ。
「・・・なんで居るんですか、兎上君・・・」
兎上由紀。赤軍2年生。
杏が苦手なタイプベスト5には入るであろう性格の彼はこちらを見据えて問いに答えた。
「僕は先輩の申しつけでお前を探しに来たんだ。僕の苦労を労われよ、石水」
「はあ・・・」
誰だこいつにそんな頼みごとをした先輩は、と怒りたくなったが今そんなことで怒っても仕方がない。
「だが何故か玄関が開かなくてな、他に出口を探していたところなんだ。それでドアノブのついていないドアを見つけた。だからお前たちにノブは持っていないかと聞いたんだが?」
仮にドアノブがあった所で貴方はそれをつけれるだけの技術があるのかと問いたくなったが彼に常識が通用しないことぐらいわかっているので言うだけ野暮だと認識する。
「あ、杏さん?その人、誰?」
秋月さんが杏に問いかける。ああ、そういえば皆さんはこの人を知らないのだった。
「・・・兎上君です。杏の同級生です・・・。」
「へえ・・・?」
秋月さんが兎上君のほうを見て言う。
「えっと、ドアノブ、ありますよ?・・・一応。」