想像の小部屋

なんか色々まとめたり書いたり。

無人の館にご注意を #6

透明の戯言

「困ったな」

俺は呟いた。霊体である俺のことは人間は愚か鬼にも見えないようだ。

発言は拾ってもらえることなく空に消える。

これでは何かに気づいても聞いてもらえないし協力するにもポルターガイストを起こすしかできない。

ポルターガイストなんか起こしてどうするのだ、鬼の気を引くくらいできるだろうか。

それにこの黒軍の野郎信用できるのか?

無表情すぎてわからない、りーちゃんに変なことしたら謎の寒気に襲われてもらおう。

 

さて。

霧野とか言う奴が鬼と対峙してる間に黒軍の女の子が階段を上って行っていた。

その子に会わせれば霧野はりーちゃんから離れてくれるだろうか?

ならどうにかして上に誘導しないと。階段の方で物音でも立てればいいか?

不安だったけど少しりーちゃんの元を離れて階段へ向かう。

いざ物音をたてようって時に、赤軍の少女と黒軍の男が2階で移動してるのが見えた。

「なんだ近くに居るじゃん!ラッキー」

そう呟きながら階段の真ん中の方の手すりを派手に壊してやった。

思惑通り、双方が階段によってきて階段越しに対面した。

なんか俺キューピットさんみたい?

おかしくて笑いがこぼれた。こんなトコでキューピットだ?笑えるわ、我ながら傑作だ。

 

Side.風兎

駆け寄った階段の先には黒軍の男と赤軍の女が居た。

さっきの音はあいつらが?階段を見れば一部てすりが壊れていた。音の原因はあれだろうか?

ずいぶん不自然な壊れ方をしたようだった。下側から無理に押したような?

でも、いつかあんな壊れ方をしていた物を見たよう、な?

「真!秋月は!?」

階段の上から発せられた大声で考えが中断される。

くそうっとおしいな。あんな大声出して鬼がよりついてきたらどうするんだよ。

「見てない。はぐれたの?」

黒軍のもう一人の仲間はどうにも秋月というらしかった。

いつまでも階段を挟んで会話していても仕方がない。そう思って声を掛けて上に上がり合流した。

黒軍の二人が話し込んでる間に赤軍に声を掛けた。

「ねえ、お前だれ?」

「へっ?あ、えっと、石水杏・・・です・・・」

2年生であると言ったその人は実というらしい黒軍の奴と一緒に協力しているようだ。

ならますます霧野はここにおいて行きやすそうだ。ハッキリ言って敵軍と一緒に化け物に立ち向かうなんてごめんだ。とっとと離れてほしい。

この石水という少女が裏切られようが僕は関係ないのだから。

「霧野、お前そっちと行動するよな?」

塔里さんが言う。そりゃそうだ、そのために僕はわざわざ合流してやったんだから。

「まあ、それでいいと思う。こんな大人数隠れられないから。」

「え、隠れるのか?」

実とやらがとんでもない発言をした。

なんだコイツ、走って逃げると出も言うのか?

「・・・あ、もしかしてお前らも武器持ち合わせてないのか?」

「は?武器?」

思わずマヌケな声が出た。武器?戦うのかこいつ?

確かに僕たちは武器を持ち合わせてない。散歩に武器を持ちだすなんてどんな不審者だよ。

「た、戦うのか?あの鬼と?」

塔里さんがありえないといわんばかりの顔でそう言う。僕の気持ちを代弁してくれるのはありがたいけどすごい声震えてるぞあんた。

「あ、その杏は・・・武器、持ち合わせてて・・・それで、あの・・・」

鬼は、戦うと消える事を教わった。そして玄関のあかない事、協力関係にありたいという考えを聞いた。

「だ、だから・・・!」

「一緒に行動しようって?武器持ちは一人、今一人が不足してる状況で?」

言葉を詰まらせた少女を僕は睨み付けて言葉をつづけた

「僕はそもそも敵軍とそんなにあっさり協力できないね。塔里さんは好きにしていいよ。僕は一緒に行動しない」

そう言って階段を降りる。あとから慌てた様子で塔里さんがついてきたっぽかったけど他はついてこないみたいだった。

 

 

 

「あ、お前さ良かったらこれ持って行けよ」

「え?」