無人の館にご注意を #5
黒い孤独
Side.結奈
無我夢中で開いた扉の先が真っ暗で、焦ってたら濡れていたらしい床で滑ってこけたのが随分と懐かしいようだ。
恐怖から抜け出したら今度は襲ってくる不安と孤独感でもう頭の中が空っぽだった。
電気をつけて浴室だとわかったそこで私は座り込んだまま動けなかった。
「・・・疲れた、帰りたい。」
呟いても返事は帰ってこない。
ため息をついて、いい加減行動しなければと立ち上がって浴室内を見渡した。
濁った水が張られた浴槽、何も入っていない棚。
思ったより何もない部屋だ。まあ浴室なんてそんなものだろう。
「ん?今なんか・・・?」
視界の隅に一瞬光るものがあった。浴槽・・・の、中だろうか?
浴槽に近寄り中を除けば、濁りの合間からわずかに何かが見えた。
少しためらったが手を突っ込んでそれを取る。
それは「2F 子供部屋」とタグのついた鍵だった。
「・・・必要、なのかな?」
こんな浴槽に沈んでいたような鍵が必要だろうか?かと言ってもう一回沈めるのは正直もったいない。
いっそ持って行ってしまおう。
「やだなー・・・アレ、もう会いたくないな・・・」
心細い気持ちでゆっくりと歩み出した私は、まず実先輩を探したくて階段を上がった。
「あれ?この家3階もあるんだー・・・。」
私が結局選んだのは3階だった。上から順番に見ていけば以外と見つかるかもしれない。そう思ってのことだった。
3階には部屋が正面と左に二つあるだけだった。
左の部屋には鍵がかかっていて入れなかったので正面の部屋に入った。
広いけど物が少なくて殺風景なその部屋にはもう一つドアがあった。
「・・・あ、れ?え?ん?」
先に進もうとそのドアを開けたがドアの先は壁だった。
「はあ?なんで?ただの壁じゃん・・・どんないたずら心だよ・・・・」
呆れてドアを閉めると私は部屋を後にした。
そして下に降りかけた時、衝撃音がした。