無人の館にご注意を #2
「・・・ほんっとにただの遊びかよ・・・」
白い少年は呆れた。
追ってきたこと少しばかり後悔する程度には黒い少女達の目的は普通だった。
「だから言っただろ?疑いすぎなんだよ」
笑って少年の頭を撫でた。
自分の頭を撫でた人物をちらと見て、さらに少年はため息をついた。
そして、そういえばと。思い立った。
「・・・僕らも、行こうか。」
「え?」
白い制服を着た二人は足を踏み入れる。
後から追ってきていた死人と共に。
出会った青い
Side.結奈
「思ったより広いっすねーwwwwww」
どうにかこうにかついて来てもらった先輩方には申し訳ないと思う。
うん。正直申し訳ない。けれどあんなに同僚に馬鹿にされては仕方ないじゃないか。
私だって好きでこんな幽霊屋敷に来たわけじゃ無い。正直に言えば怪談だの幽霊だのは苦手だ。でも爽に笑われては腹も立つ。
肝試し行ってきたぜ!って言ってびっくりさせてやる。
「一周まわったらそれでいいんだよな?」
呆れたように実先輩が言ってくる。
「そっすねwじゃあ行きまー・・・」
ガシャン
何かの割れる音。それによって私の言葉はさえぎられた。
音の在処は、
「・・・あっちの方からだと思うけど。」
名前なんだっけ、ついて来てくれたもう一人の先輩がそう言った。
えっとー真?先輩だったはずだ。
「なんだよ、他にも肝試しに来てた奴でも居んのか?」
そう言って扉のほうに歩き始めた実先輩。
焦って思わず腕を掴んで制止してしまった。
「・・・秋月?」
少し驚いたような顔をしてこっちを見た。
「え?あ、すいませwwwwwwwwww急にwwwwwwww歩き出すからwwwwwwwびっくりしたんすよwwwwwwwww」
正直言ってあんまり仲良くない先輩と二人でこんなトコに残されるなんて冗談じゃない。ましてや一人なんて拷問だ。
「・・・・。ああ、うん。僕見てくる。」
真先輩がそう言って私たち二人を残して行ってしまった。
相変わらず世話焼きな実先輩が気をつけろよ、と注意を促している。
真先輩がドアの向こうに消えて、そして。
実先輩が私に向き直った。
その時。だった。
「―・・・実、先輩。あれ。」
私が青い、青い鬼を見たのは。
Side.真
ずいぶん強がりな女の子だ、と思った。
先程まで行動を共にしていた後輩の女子生徒、確か名前が秋月結奈。
ずっと実の勉強を見ているのにも飽き飽きしていたところだ。彼女の誘いはそれなりに僕にとって魅力的なモノだった。
正直幽霊とかは信じて無い。でも別に否定するわけじゃ無い。あえて言うなら興味が無い。
それでも後輩を気遣う心くらい持ってる。多分あの様子は怖いんだろう。なら人当たりの良い世話焼きな実を残して原因を探りに行くのがベスト。
そう思ってドアを開けた先はキッチンダイニングだった。
「・・・皿。」
流し台のすぐ傍でお皿が割れていた。これがさっき割れたんだとしたら音の原因はコレだろう。他に割れているものは特に見当たらない。
さっき自分が入ってきたドア以外にドアがない事から考えて、これを割った誰かが焦って窓からでも逃げたんだろう。
そうと分かればここに用事はない。さっさと戻ろう。
破片と化した皿に背を向け、実達が待つ玄関ホールへと向かった。
の、だが。
「居ない。・・・実?」
どうしたものか、二人の姿はなかった。
「・・・実?秋月?」
・・・応答、無し。秋月が怖がってることを察して外で待ってるのか?
玄関に手をかけて扉を開け・・・
「・・・?」
開け・・・開かない。開かない?
「あれ、なんで・・・。」
鍵・・・は、かかっていない。でも、ノブが回りきらない。
おかしい、変だ。玄関扉は壁のようにそこに佇み、1ミリとして動く気配はなかった。
困ったことになった、と思った。
「仕方ない。」
探しに行くか、と視界の端に映った血痕を見て呟いた。